カテゴリー別アーカイブ: 山久瀬洋二の履歴と日常

山久瀬洋二の日常と旅日記

「正当な英語」にこだわる日本人の大きな落とし穴

言語教育を考えるとき、そもそも正当な表現や発音は何なのかということに人々はこだわってしまいます。
13億人以上が使用する中国語を例にとれば、最もスタンダードな中国語は北京語であるとされ、人々は北京語のことを「普通話」と呼んでいます。
しかし、長い中国の歴史をみるならば、北京語が標準語になったのはごく最近のことなのです。現在の北京語は、17世紀に満州族が中国に侵攻して打ち立てた清の時代にできあがったといわれています。元々の中国語に満州族の発音などが混ざり、北京語となったという説が有力なのです。

では、本来の中国語のルーツはというと、現在の華中あたりの中国語ではなかったかといわれています。今では、「普通話」以外の中国語は方言とされていますが、実は方言の方が正当な中国語だったというわけです。
日本語では漢字を使いますが、いうまでもなく、これは中国から輸入したものです。そして漢字の音読みの中に中国語の古い発音が残っていることを知っている人はあまり多くないようです。漢詩は中国語の発声の美しさを意識して作詞されているといいますが、現在の北京語では漢詩が頻繁に造られていた唐の時代の発声を再現することはできないのです。むしろ華中の方言や日本語の音読みの中にそのヒントがあるのです。
中国人の多くが方言と言われている地元の発音や発声にこだわっている理由は、本来正当ではない北京語への反発もあるのだと、中国の友人が語ってくれたことを思い出します。
これは日本語でもいえることかもしれません。正当な日本語は東京で話されている言葉かというと、そうではないはずです。元々京都が日本の首都であったわけですから、関西弁の中にそのルーツがあるのかもしれません。
こうしたことを考えると、正当な言語というのは、時の権力や為政者の意図により時代ごとに変化してきたことがわかります。

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山久瀬洋二の日常と旅日記

ロサンゼルス点描

ロサンゼルスは大都会ですが、いわゆる東京でいう首都圏にあたる、ロサンゼルス中心街とその周辺を含む広大な地域のことを Greater Los Angeles といいます。
さて、このグレーター・ロサンゼルスの中でも、太平洋岸に面したサンタモニカの近く、パシフィック・パリセイド地区はビバリーヒルズやマリブに挟まれた高級住宅地です。その日、私はアメリカの友人の運転するオープンカーに乗って、どこで昼食を楽しもうかと話していました。
彼曰く、リビエラ・カントリークラブがあるけどそこにいかないかと。
「構わないけど、あそこはメンバー制だろ?しかも、このあたりじゃトップクラスのクラブじゃないか。君はあそこのメンバーなのかい。そりゃおどろきだ」
そう問いかけると、
「いや、メンバーじゃないさ。聞くところによると入会金も数十万ドルっていうじゃないか。そんな金はないさ。ただ、あそこに働いているやつを知っているんだ。そいつの知り合いだといって行けば、入れると思うよ。ランチを楽しんでメニューのお金を払いさえすれば」
「そんなにうまくいくんだろうか……」
そう話しているうちに、彼はリビエラ・カントリークラブのゲートに車を滑らせます。

案の定、ゲードを管理している警備員が、メンバーですかと問いかけます。
そこで彼は言います。
「いえね。実は忍び込もうと思ってね」
忍び込む (違法に) は英語で smuggle in といいます。彼はよりによってその表現を使ったのです。
するとガードがすかさず、ニコッと笑って、
「ならば、俺が必要だね So you need to see me.」といいます。
私の友人も笑い出して、「いやね。ここにマイケル(仮名)が働いてるだろ。あいつは俺の知り合いなんだ。彼に連絡して中に入れてくれよ」
とおおらかに話します。
ガードは、ゲートにある電話で、中にマイケルって奴がいると思うが、チェックしてくれといいます。そして確かにマイケルはその日働いていたのです。

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30年ぶりのルート66、風景は昔のまま保存されていた

【ルート66の歌詞の冒頭より】

If you ever plan to motor west,
Travel my way, take the highway that’s best.
Get your kicks on Route sixty-six.

西へ旅するなら、ハイウエイを楽しもう。そう、ルート66で出発だ

 もう30年近くも前のこと、アメリカに住んでいた私は、ある雑誌の企画でアメリカ南西部を何度も取材したことがありました。
 その時に立ち寄ったのが、テキサス州からニューメキシコ州にかけて点在する町々でした。そこには、カリフォルニアに向かう人々が通る国道66号線 (ルート66) が通っていたのです。

 今回、週末を利用して、久し振りにこの地域に足を伸ばしてみると、30年前と全く変わらない、古きアメリカの風景があたかもタイムスリップしたかのように、昔のままの姿で私を迎えてくれたのです。

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英語の未来を考えよう。これからも英語は世界の言語として君臨するのか…?

最近、世界の動きが読みにくくなっています。
特にヨーロッパの政情は混沌としています。イギリスの EU からの離脱という激震の後、オランダやフランスの選挙では、右傾化の流れをなんとか食い止めることができましたが、今後EUが今まで通り安定した体制を維持できるかは不透明です。EU はかじ取り役としてのドイツとフランスの連携がさらに求められるようになるはずです。

一方、一時は世界の GDP の半分を生み出していたアメリカの影響力が、21世紀になって陰り始めてきたことも考えなければなりません。アメリカは以前のように世界の警察官としての強いリーダーシップをとれなくなっています。20世紀の混乱を克服した中国の伸長が著しく、アメリカに次ぐ経済力によって存在感を誇示していることもその理由の一つです。そして、ロシアがソ連崩壊後25年を経て、再び強国として台頭してきたことも忘れてはなりません。

こうしたイギリスやアメリカという英語を母国語とする強国の立ち位置の変化をみるとき、今後も英語が世界の言語としての地位を維持できるのだろうかという疑問を抱く人もいるかもしれません。世界の人々の共通言語として、いつまで英語は機能できるのでしょうか。

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文化大革命と反日教育、そして次は

中国の南西部、貴州との州境に近い湖南省の辺境に、鳳凰県という県があります。ここにある鳳凰古城という街は、川に沿って中国の古い町並みがそのまま残され、そこで生活が営まれています。
遠隔地にあるため、観光に来る人はほとんどが地方の中国人で、日本人に会うことはほぼありません。明か清の時代に迷い込んだような木造建築が並ぶなか、露店や市場ではこの地方に多く住むミャオ族の人々も多くみかけます。

鳳凰県

そんな癒しの世界の人通りの多い路地を歩いているとき、加油中国(中国頑張れ)という看板を掲げた料理屋をみつけました。よくみると、「日本人は入るべからず」とその横に書かれています。また、大通りにあるもう一軒の店には「日本人と犬はそばにくるな」という中国語と英語併記の看板もありました。
無数にある料理屋の中のほんの数件でのことですが、以前北京の旧市街でも同様の看板をみたことがあり、反日デモ騒動から何年も経過した今でもこうしたことがあるのかと考えさせられたのです。

鳳凰県
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