The very weapons that Israeli forces have used to enforce a blockade of Gaza are now being used against them.
民兵組織に対するアメリカの報復に見るメッセージ
アメリカは、イランがハマスだけでなく、イエメンの民兵組織フーシ派や、レバノン南部で活動するヒズボラなども支援していることを非難していました。イエメンは紅海の出口にある国で、スエズ運河や湾岸諸国からアジアなどへの石油輸出をはじめとする物流の重要なルートに位置します。フーシ派はその地の利を活かして、イスラエルを支援する国家の船舶への攻撃を行っていたのです。同時に、ヒズボラはイスラエルの安全を北部から脅かしています。アメリカは、今回の事件を契機に、こうした脅威に対して楔を打とうとしたわけです。
一つは、アメリカがイスラエルを支援していることを内外に改めて伝えることです。しかし、同時にイスラエルには、そうした支援を行うからこそ自制を促してほしいという圧力もかけていることになります。
イスラエル国内でも割れる世論に窮するネタニヤフ政権
イスラエルでは、攻撃を続け人々を苦しめるだけで人質を解放できない政府への反発があるだけではなく、ネタニヤフ首相の支持基盤である右派や強硬派からも彼が成果をあげられないことに見切りをつける声が上がっているのです。
強硬派は我々から見ると異常とも思える論理で、ガザをイスラエルの一部にするべきだと主張します。つまり、2,000年以上前にここはユダヤ人の国のあった場所で、そこに自らの国を打ち立てるのは当然の権利だと主張し、ガザ地区からパレスチナの人々を駆逐するべきだと政府に迫るのです。
ですから、ネタニヤフ首相はガザ地区の南部の拠点にも兵を送り、ガザ地区全体を制圧し、できるだけ早くハマスを徹底して壊滅させることに注力するのです。しかし、報道されているように、ハマスもしたたかで、元々イスラエルから奪った武器をも使用して、ゲリラ戦を続けてきます。
とはいえ、このままイスラエルが残酷な戦争を続ければ、内外の批判にさらされるだけではなく、現在ヨルダン川西岸に自治区を維持し、ハマスが分裂する母体となったファタハや、そこに住むパレスチナ住民の敵意も煽ることになりかねません。それはイスラエルにとっても大きな脅威です。
異なる言語、宗教、部族が交差する「中東」の世界
例えば、アラビア半島を見ると、さまざまな小国が連携しアラブ首長国連邦を構成しています。この首長という言葉からもわかるように、アラブの世界は元々さまざまな部族が独立して活動し、部族同士が時には対立し、時には同盟しながら、お互いの勢力を維持していた極めて複雑な地域だったのです。
ちょうど、江戸時代に日本が300以上の諸侯によって統治されていた分断国家であったことを想像すればわかりやすいと思います。アラブの世界はさらにそれらを統一する幕府のような強力な組織がなかったわけです。
しかも、アラブは部族と、彼らが信仰するイスラム教の宗派の違いという二つの異なる要素によって、簡単には一つにならないのです。宗教的な背景からイランとサウジアラビアが対立するように、アラブ首長国連邦も、その首長の意思によって、それぞれの小国家の統治方法も異なっているのです。
極端にいうならば、アラブという世界にアラブという国家は存在しないのです。そんな彼らの中の多くに、共通の脅威として民族意識をもたせたのが、イスラエルの建国と、そこで土地を追われたパレスチナ難民の存在だったのです。
ロシアの攻勢に悩まされているウクライナの問題にしろ、ガザの問題にしろ、政治的な分析はいくらでもできるのです。しかし、それを解決し、人命と財産を守ることができないのが、人類の知恵の限界なのかもしれません。
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『日英対訳 I Have a Dream! 世界を変えたキング牧師のスピーチ[増補改訂版]』
マーティン・ルーサー・キング・ジュニア (原著)、山久瀬 洋二 (解説)
1955年、モンゴメリー・バス・ボイコット事件を契機に自由平等を求める公民権運動がにわかに盛り上がりを見せる。この運動をカリスマ的指導力で舵取りしたキング牧師。インド独立の父ガンジーに啓蒙され、自身の牧師としての素養も手伝って、徹底した「非暴力主義」を貫き、群衆を導いた。“I Have a Dream (私には夢がある)”であまりにも有名なスピーチで英語を学ぶと同時に、アメリカが大切にしている価値観が理解できる一冊です!
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