【海外ニュース】
New York State Is Set to Loosen Marijuana Laws.
(New York Times より)ニューヨーク州は、マリファナ関連の法規制を緩和
【ニュース解説】
明けましておめでとうございます。
新年の最初のニュース解説。テーマは人の価値観は時とともに変化するということです。
医療行為でのマリファナの使用を認めると発表したクォモ Andrew M. Cuomo ニューヨーク州知事の記事がニューヨークタイムズの紙面に掲載されたのは、新年早々1月4日のことでした。これだけであれば、別にわざわざこの記事を紹介はしません。実は背景には、もっと面白いニュースが隠れています。というのも、こうした動きの背景に、アメリカでマリファナを合法化しようという動きがあるからです。
1月1日の同紙には次のような見出しがありました。
Up Early and in Line for a Marijuana Milestone in Colorado
(画期的なマリファナ合法化を受け、早朝からコロラドでは行列が)
They were among the hundreds of tourists and residents across Colorado who eagerly took part in the country’s first-ever sales of state-regulated recreational marijuana.
(彼らは、コロラド州が一般的な楽しみのためのマリファナの使用を合法化した記念すべき日のために州の内外から集まってきた人々なのです)。
つまり、コロラド州は、今年から、マリファナを煙草のように楽しむことを合法としたのです。実はワシントン州も同様の法律を通しています。
マリファナは1960年代に、反体制運動など様々な政治意識を持った人々の間でたしなまれ、多くのミュージシャンなどのアーティストもマリファナを常用していました。マリファナが麻薬として非合法化されたあとも、他のドラッグとは違い、害の希少なマリファナを禁止し、煙草やアルコールを合法としているのは、体制を批判する世相への保守派の弾圧だという批判も多くありました。
日本では、正に「団塊の世代」の記憶の中に息づいている論争だったのです。
コロラド州とワシントン州で、住民投票を経てマリファナの所持が認められたというこのニュースは、そうした団塊の世代の価値観が、今なおアメリカのリベラル派の人々の中に深く根付いていることを意味します。
ニューヨーク州の今回の決定によって、マリファナの医療行為での使用が認められた州の数は20州となっています。
ニューヨークタイムズは、In 2011, he successfully championed the legalization of same-sex marriage in New York. And a year ago, Mr. Cuomo pushed through legislation giving New York some of the nation’s toughest gun-control laws. (2011年にクォモ州知事が、同性の結婚を支持し、1年前にはアメリカの中でも最も厳格な銃規制の法律を議会に通した)と紹介し、アメリカのリベラル派が最も頻繁に主張する同性愛の権利擁護と銃規制を共に押し進めた政治家であるとコメントしています。そして、このマリファナの部分的合法化が、彼の政治的スタンスをさらに一層鮮明にしたというわけです。
さて、面白いことに、アメリカは地方分権が徹底した国であればこそ、こうした法改正ができるのですが、連邦政府には連邦政府の法律があり、そこではマリファナの栽培と使用を禁止した条項が明記されています。
今後、その整合性をどうするかというテーマが、コロラドやワシントン州、そしてニューヨーク州などに残されているわけです。何かを決める前に完璧な準備をもってプロセスを設定しないとなかなか前に進まない日本人には理解しがたい矛盾が、今論議されているのです。
新年早々にコメントしたい事。
それは、このマリファナの事例のように、人の価値観は日々変化するということ。さらに、今回の法改正は、マスコミや国の広報活動に惑わされない市民の目と活動の成果であるという点です。あの学生運動はなやかなりし頃のテーゼを象徴するような今回の法改正が我々に投げかけるものは何でしょうか。
硬直した制度やコンプライアンスの締め付けなどで、人々が柔軟な発想をしにくくなっている今日この頃。今回のニュースへの賛否は別れるものの、このニュースから、我々が忘れてはならない、未来へ向けた意識のあり方やものの見方が、みえてくるのではないでしょうか。