Washington has the capacity to administer more than 45,000 COVID vaccinations a day, Gov. Jay Inslee told reporters Feb. 4.
(ワシントン州は1日あたり4万5千以上のコロナのワクチンを供給する状況にあると、インスリー州知事は2月4日の記者会見で表明)
― Bellevue Reporter(シアトル近郊のローカル紙)より
アメリカから届いたワクチン接種をめぐるエピソード
一昨日、アメリカ西海岸の
ワシントン州に住む古い友人から、いきなりSkypeで連絡がありました。
「どうしてる?」
というので、相変わらず日本は緊急事態宣言で、山にこもってテレワーキングだよと伝えると、彼はニコニコしながら、もう少しの辛抱だと思うよと伝えてくれました。理由を尋ねると、彼はすでに1回目の予防注射を終えているのだというのです。
「君って、確か60歳になっていないだろう。まず医療関係者から始めて、次に65歳以上の高齢者の順番に接種が決まっていたと思うけど、そんなに早かったのかい」
と聞くと、
「いえね。ラッキーだったよ。実は、ファイザーのワクチンが俺の町にも届けられたんだけどね。フリーザーが故障していることがわかってね。こりゃ大変だ、
ワクチンは5日しかもたないぞということになったんだよ。そこで、町では急遽誰でもいいから、先着順に接種するから急いで指定のところにやって来いっていったんだ。それで大急ぎで行ってみると、年齢も何も関係なく、ありったけのワウチンを到着順にどんどん接種している。なんとか間に合ってね。見事接種してもらったというわけ」
「でも、ファイザーのワクチンは
2回接種しなければならないよね」
「接種が終わったときにチケットをもらってね。ここで1回目を受けた人は年齢等に関係なく、次も接種できるんだって」
この話を聞いたあと、
カリフォルニアと中西部は
オクラホマシティに住んでいる知人にも尋ねてみると、同じようなことがあちこちで起きているって聞いたよというのです。ちなみに、この2人も無事に接種を終えています。
「副作用は?」
と聞くと、全員が、
「ちょっと注射をしたところが痒かった程度かな。聞くところによると、微熱が出たという人はいたようだけど、それぐらいであとは何もなかったようだよ」
と答えてくれました。
ワクチンの接種場所は薬局やドライブスルーなど、様々です。
同じ頃、日本では「
練馬方式」という接種の方法がニュースで紹介され、いかにクリニックを通して効率よくワクチンを接種し、かつキャンセルがあったときにはどのようにして公平に余ったワクチンの供給を行うか、極めて緻密な議論に多くの専門家が頭を悩ませていました。そして、今でも副作用について広範な調査が必要だと主張する人も多くいます。
しかも、そのワクチン自体はまだ日本には到着していません。
前進ありきで行動するアメリカと完璧を目指す用意周到な日本
ここに紹介した話は、まさにアメリカと日本とのビジネス文化の特徴と違いをよく物語っています。
最近、アメリカのメディアではコロナ感染者が減り始めたとはいえ、イギリスなどで発症した
変異ウイルスがアメリカで広がり始めていることへの懸念が報道されています。
そうした中、
バイデン政権はまず、できるだけ早くアメリカの隅々までワクチンを普及させることに注力しました。
時間的に見るならば、確かにアクションは迅速でした。すでにアメリカ各地で接種が行われ、その数はどんどん増えています。2月8日現在で6000万人弱のワクチンの供給が終わり、4100万人以上への接種が終了しています。この速さには驚かされます。ほんの10日前にもならない、大統領就任式前の絶望的な感染拡大の報道はすでに過去のものとなりそうです。
その迅速さゆえに、現場では混乱が発生しがちで、ワシントン州の友人はその混乱のおかげで、年齢制限を超えてワクチンの接種を受けるという幸運に見舞われたのです。
まずアクションを起こし、問題があればその都度現場で解決しながら前に進もうというのは、アメリカのビジネス社会では一般的に見られる現象です。そして、これがアメリカ流の合理主義というわけです。
それに対して、日本は準備万端整えない限り、前に進もうとしません。
周到に準備することはいいことかもしれません。しかし、それが緊急時に常にプラス方向に作用するとは限りません。さらに、準備や根回しに時間がかかりすぎて、肝心な交渉において海外とのスピード感についてゆけず、取り残されてしまうこともよくあります。また、状況に突然の変化があったとき、逆に完璧に準備をしてしまったがために、臨機応変に対応できず、人々の動きが固まってしまうという現象もよく見受けられます。
今こそ心に留めておきたい sustainability と resilience
最近よく使われている sustainability という言葉がありますが、これは「持続可能」と訳すよりは、「臨機応変に対応し、状況に適応できる力」を指す言葉であると思った方が適切です。そのためには、もう一つのキーワードである resilience という言葉を知っておくべきです。この言葉の意味するところは、「回復力」や「弾力性」です。
今回のワクチンの早急な供給は、もちろん国内での感染を抑える上でも求められることですが、今後どれだけ早く日本が国際社会との交流を取り戻すかという観点からも重要です。
日本が完璧を好み、準備が整わない限りなかなか前に進みにくい文化があることは、よく知られた事実です。その背景には
以前にも解説した、何かあったときの責任追及のリスクがあるのでしょう。それにもまして、何かあったときに現場が即応し、判断できるような
権限委譲が行われていないことが指摘できます。日本では権限委譲があらゆる組織で異常に遅れているのです。この権限委譲があればこそ、sustainability と resilience の二つの概念がプラスの相乗効果を生み出すことができるわけで、それがアメリカの強みといえましょう。
最後に、コロナは侮れない怖い感染症です。一家全員が罹患し、生死をさまよったイギリスの友人が、その経験を切々と語ってくれています。そのインタビューをここに掲載します。ぜひ参考にしてください。
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インタビュー動画はこちらから
⇒https://www.youtube.com/watch?v=cMfxFLHxpE8&t
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『英語で聞く 世界を変えた女性のことば』ニーナ・ウェグナー(著)
「世界を変えたい」と本気で願い、人々の心を、そして世界を動かした女性たちのスピーチを集めました。彼女たちの熱い願いを耳で聞き、目で読み、英語と歴史背景を学べる1冊です。タリバンに襲撃されても、女性が教育を受けることの大切さを訴え続け、2014年ノーベル平和賞を受賞した若き乙女マララ・ユスフザイを筆頭に、アウンサンスーチー、マザー・テレサ、緒方貞子、ヒラリー・クリントン、マーガレット・サッチャーなど、名だたる女性たちのスピーチを、雰囲気そのままに収録。