タグ別アーカイブ: アメリカ大統領選挙

香港の騒乱と「レッドカーペットの屈辱」が語ること

Reuters/Tyrone Siu

“That stronger hand threatens Hong Kong’s future as a global commercial hub, but business leaders increasingly fear resisting a Chinese government that does not tolerate dissent.”

(世界経済のハブとしての香港の将来が大きな脅威にさらされる中、ビジネスリーダーたちは中国政府の強硬で頑なな態度にどう向き合うか神経を尖らせている)
― New York Timesより

香港での大規模デモに見える中国の覇権誇示と情報統制

 この数週間の極東での出来事は、アメリカと中国との駆け引きに翻弄される、この地域の現状と本音を奇しくも炙り出してしまいました。
 
 まずは、香港で犯罪者の中国への引き渡しを容認しようとした「逃亡犯条例」の改正に市民が強く反発し、大規模なデモが街を覆い尽くしたことです。北京の息が掛かった現在の香港政府は、市民の圧力の前に条例の撤回を余儀なくされました。香港の中国との最終的な統合を目指す北京にとって、これは確かに痛手だったはずです。
 一つは、香港が中国の意のままにならないことを北京が改めて実感したこと。そして、もう一つは、グローバル経済への重要な窓口の役割を果たしてきた香港の存在そのものの将来への不安を、中国が自ら世界に伝えてしまったことです。シンガポールなど、他の金融センターに香港の地位を譲ることになりかねない理由を煽ってしまったことは、中国の失策だったといっても過言ではないでしょう。

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海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

アメリカの大統領就任式の速報解説

【海外ニュース】

This is literally true. The Washington area has become one of the most prosperous parts of the United States in recent decades, while much of the country has stagnated economically.
(New York Times より)

彼の就任演説で言っていることはその通りだ。ワシントンDCはアメリカでも最も繁栄した地域になっているものの、他の地方の多くは経済的な停滞の中で苦しんでいる

【ニュース解説】

トランプ大統領の就任演説は、英語がネイティブでない人が聴いてもわかりやすい、平易な英語と簡単な表現で、しかもスピードもゆっくりと行われました。それは、アメリカの歴史や伝統、そして価値観に触れながら、アメリカ人に語りかけていた過去の数人の大統領のスピーチと比べても、極めて異例なほど単純で伝わりやすい内容でした。

ニューヨークタイムズが指摘したように、アメリカでは貧富の差や知的格差が拡大し、その不満がこの新政権を生んだのです。それは、アメリカの政治の専門家、経済や外交に関する知識人、さらにそれを支える高等教育と職場での競争を勝ち抜いた人々への不満の爆発でもありました。
だから、彼は就任演説では誰にでもわかる単純な言葉と表現に終始したのです。

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海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

オバマ大統領の「お別れ演説」が語ること

【オバマ大統領のお別れ演説より】

Our Constitution is a remarkable, beautiful gift. But it’s really just a piece of parchment. It has no power on its own. We, the people, give it power — with our participation, and the choices we make.

我々の憲法は素晴らしい、見事な贈り物です。しかしそれは文章に過ぎません。それ自体には力はないのです。我々が参加してそして選択することで、我々国民がそれに力を与えるのです。

【ニュース解説】

いよいよアメリカで政権が交代します。
それに先立って、オバマ大統領がシカゴで大統領としては最後の、お別れの演説 Farewell Address を行いました。
その内容が素晴らしかったと、多くの人が拍手をおくっています。

アメリカにとって、大統領とは決して最高権力者ではありません。地方分権が日本よりはるかに徹底しているアメリカでは、大統領は行政の長というよりも、国家の象徴としての意味合いが強いのです。
今回のお別れの演説は、そうしたアメリカという国家のビジョンの牽引者としての大統領のあり方を国民に強く問いかけたものでした。アメリカの大統領とは、アメリカという国家の哲学を象徴するシンボルなのです。

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海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

アメリカの次期政権が東アジアにもたらすもの

【海外ニュース】

Obama warns Trump over Taiwan ties.
(Taipei Times より)

オバマはトランプの台湾との絆構築に警鐘

【ニュース解説】

アメリカの政治から目が離せません。
ここに至って、今回の大統領選挙でロシアがアメリカのネットシステムに侵入し、クリントン候補に不利なように世論を操作したとホワイトハウスが発表したのです。しかもトランプ次期大統領がこの事件に関わっていたという報道が世論に大きなインパクトを与えています。
通常、ホワイトハウスを退く大統領は、業務の引き継ぎに努めながら、静かに残りの時間を過ごすのが習わしです。しかし、オバマ大統領はそんな慣例を破って、あえてロシアの関与を強く非難し、トランプ氏の関与をも示唆しました。

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「本音を見抜かれて」山久瀬洋二・画
「世界の心の交差点で」〜コミュニケーションと誤解の背景〜

アメリカの中の「異文化」の歪みが顕在化した大統領選挙とは

「よく business is business という言葉があるように、欧米には、ビジネスとプライベートな感情をわけて対人関係を維持する文化がありますよね。例えば、仕事上では激しく意見を戦わせても、それは個人と個人との関係には影響を与えないというように。つまり、ビジネスとなれば、相手の立場への配慮や相手との人間関係とは別の次元で対応するんだというけど、それは本当でしょうか」

「その問いに答える前に、business という言葉の意味について考えてみましょう。この言葉、確かに日本では仕事と翻訳しますが、仕事といえば、働いて対価をもらうことを意味します。もちろん、business にはそうした意味もありますが、それとは別に、その人がかかわらなければならないことという意味合いも business という単語は含んでいます。これは私の問題だよ、だからほっといてくれというようなときに、It is not your business. といいますよね。だから business は決して仕事のみを表してはいないのです。でも、確かに、欧米では仕事でのやりとりと、個人的な感情とを分けて対応する習慣があるのは事実です。だから、あたかも喧嘩をしているかのように、激しく仕事上の論争をしても、それが終わればケロリとして仲良く食事をしたりすることは、ごく当たり前の日常なのです」

「今、説明された business という言葉の意味を考えたとき、選挙で誰に投票するかということも個々の business なわけですよね」

「確かに。だから、仕事場などに政治の話を持ち込むことは、日本でもそうですが、タブーなのです。相手がどのようなスタンスをもっているかわかりませんからね」

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