カテゴリー別アーカイブ: 世界の心の交差点で 〜コミュニケーションと誤解の背景〜

異文化ビジネスコンサルタント・山久瀬洋二の「世界の心の交差点で 〜コミュニケーションと誤解の背景〜」 4000名以上の企業エグゼクティブへのコーチング、コンサルティングの経験に基づいた、実践的なアドバイス。是非、皆さんの実例やニーズも私の Twitter にコンタクトしてください。日本人にとってのグローバルなコミュニケーションのあり方について、ご一緒に考えてゆきたいと思います。

「本音を見抜かれて」山久瀬洋二・画
「世界の心の交差点で」〜コミュニケーションと誤解の背景〜

アメリカの中の「異文化」の歪みが顕在化した大統領選挙とは

「よく business is business という言葉があるように、欧米には、ビジネスとプライベートな感情をわけて対人関係を維持する文化がありますよね。例えば、仕事上では激しく意見を戦わせても、それは個人と個人との関係には影響を与えないというように。つまり、ビジネスとなれば、相手の立場への配慮や相手との人間関係とは別の次元で対応するんだというけど、それは本当でしょうか」

「その問いに答える前に、business という言葉の意味について考えてみましょう。この言葉、確かに日本では仕事と翻訳しますが、仕事といえば、働いて対価をもらうことを意味します。もちろん、business にはそうした意味もありますが、それとは別に、その人がかかわらなければならないことという意味合いも business という単語は含んでいます。これは私の問題だよ、だからほっといてくれというようなときに、It is not your business. といいますよね。だから business は決して仕事のみを表してはいないのです。でも、確かに、欧米では仕事でのやりとりと、個人的な感情とを分けて対応する習慣があるのは事実です。だから、あたかも喧嘩をしているかのように、激しく仕事上の論争をしても、それが終わればケロリとして仲良く食事をしたりすることは、ごく当たり前の日常なのです」

「今、説明された business という言葉の意味を考えたとき、選挙で誰に投票するかということも個々の business なわけですよね」

「確かに。だから、仕事場などに政治の話を持ち込むことは、日本でもそうですが、タブーなのです。相手がどのようなスタンスをもっているかわかりませんからね」

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「世界の心の交差点で」〜コミュニケーションと誤解の背景〜

アメリカで、話題についていけず、会話から取り残されたらどうしよう!?

「アメリカに出張することが多いんですが、いつも向こうの人と食事をしたりするとき、話ができなくて困るんです」

「会話についていけないってことですか?」

「例えば、向こうの人が数名いて、僕が一人のときなんか、最悪なんです。彼らが自分たちだけの話題に没頭すると、まったく取り残されてしまうんですよ」

「何の話題って尋ねてみればいいじゃないですか」

「そんなことできませんよ。だって、彼らはとても早いスピードで全く知らないことをしゃべるんです。ついていけないですよ」

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「世界の心の交差点で」〜コミュニケーションと誤解の背景〜

リオの五輪にみえた日本のお詫び文化を考える

「リオの五輪で期待に応えられずメダルを逃したり、金がとれずに2位や3位に甘んじたりした日本の選手が、インタビューで申し訳ありませんと謝っていますね。あれは不思議なメンタリティですよね」

外国人記者クラブでのランチのときに、そんな質問を受けたことがありました。

「あなたは日本に長いから、日本人が何か不本意なことがおきたらまず謝る癖があることを知っているでしょ。それなのになぜ今さらそんなことを質問するんですか」

「いえね。結局彼らは聴衆やファンの期待に応えられなかったことがあってお詫びしているんでしょ。それって、古典的な日本人の発想ですよね。最近日本人は昔ほど日常生活ではお詫びをしなくなったなと思っていただけに、久しぶりに印象に残ったんですよ」

「そうそう。日本の社会にも TPO を心得ない人が増えたような気がします。でも、選手がお詫びをすると、日本人はなぜかそれを真摯な態度だとすんなりと受け入れられるんですよね」

「というと?」

「いえね。単に多くの人の期待通りにいかなかったというだけではなく、選手がオリンピックにでるためには、様々なサポートを受けているでしょ。そうした他者の尽力や、優遇された状況があって、それで期待に応えられなかったことがお詫びの背景にあるんじゃないかと思うんですよ」

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欧米型経営と日本型経営。組織運営の長短とは

外資系企業に勤めている人がいいます。

「私は日本の企業の重厚なヒエラルキーのピラミッド、人間関係のややこしさがいやで、外資系に勤めているんです」

確かに、多くの外資系企業は、組織がフラットです。言葉遣いも比較的カジュアルで、機動性にもとんでいます。

「でも、私は以前外資系に勤めていたんですが、結局こちらは下手な英語で必死で話をして、提案しても、日本の事情なんて一考もされず、本国の要望だけが押し付けられたことも多々ありました。だから嫌になって日本企業に戻ったんです」

「問題が深刻ならばエスカレーション escalation をすればいいじゃないですか」

「エスカレーションしても、その時は聞いてくれるけど、最終的には無理なんですね。なぜかわかりますか?外資系企業は上司へのライン一つをとっても複雑でしょ。このプロジェクトのレポートラインは香港だけど、そのために受ける研修の指示はヒューストンの人事部だって風に。しかも、東京のオフィスには本国からきた支社長がいて、東京としての利益や業績についてとやかくいうわけ。だから、一つ問題がおきても、組織としてがっちりと受け止めて解決しようという体制がないんですよ」

ここでいうエスカレーションとは、何か課題があったとき、それを解決するために上層部に問題を提起することを意味しています。
外資系企業の多くが、レポートラインが複雑であることはよく知られた事実でしょう。ソリッドライン solid line とドットライン dot line という言葉があって、直属の上司はソリッドラインで結ばれていますが、それとはことなり、プロジェクトの内容によってはドットラインという別のレポートラインが存在します。常に一人の上司に報告をしておけばよいという日本の企業とは常識が違うのです。マトリックス matrix な環境でウエブ状に拡大してゆくのが欧米型の企業なら、常に社長から末端までのピラミッドをもって物事を進めてゆくのが多くの日本企業ということになります。
支社の管理も同様です。支社が常に本社を向いているのが日本企業なら、支社の中のユニットがそれぞれ各地にレポートラインを持ち、支社長は全体として支社の業績向上について本社に責任を持つのみで、各ユニットの詳細への指示は行わないケースが多いのです。

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「世界の心の交差点で」〜コミュニケーションと誤解の背景〜

日本人の文化や風習を海外の人に伝えるには色んな苦労が

Harmony is the key to the Japanese value system. Avoiding conflict, being mindful of the needs of others, creating a basis for mutual cooperation—these are the foundation of the Japanese approach.

(Japaneseness/Stone Bridge Press より)

日本のことをどう説明するか。
今回は、この課題について触れてみましょう。
日本独自の文化、風俗、そして風習を海外に伝えるのは簡単ではありません。そもそも、日本人にとって当たり前のことを、それを日常としていない外国の人に伝えるのですから。

「日本人には、謙遜という精神があってね。自分の能力を敢えて低く見せてこそ、相手から尊敬されるんだよ」

「なにそれ。全然わからない。自分のことをちゃんとアピールして、何ができるかしっかり説明しなければ、相手だって困惑するんじゃないの?」

「いえね。相手に私はこんなこともできるんですなんていうと、かえって本当なのと疑問に思われないかな」

「そうか、Talk is cheap. ということね。そんなことなら日本人だけの美徳じゃないよ。どこにでもあることさ。Don’t bite off more than you can chew ともいうしね」

「それってどういう意味?」

「自分が口にいれられないものを口にするな。つまりさ、能力以上のことをやろうとするとまずいよってこと」

「謙遜という概念はね。そんなことじゃないんだよ。たとえ自分にはこのことはできるって自信があっても、敢えてそれを口にせずに、へり下ることをいうんだよ」

「そう。でも考えてごらん。もし就職のために面接にいって、私は何もできませんっていうと、面接官は君と会うのは私の時間の無駄だと思わないかい。謙遜するって、相手に対しても失礼なことだと思うけど」

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